真空管アンプのほとんどには出力トランスという重たいトランスが使われています。
手元にあるコンプレッサーのひとつに「Shadow Hills Mastering Compressor」というものがあり、このコンプの中に「出力トランスを選ぶ」という機能があります。
正直差があまり良く分からないのですが、音響的には知っておいても損はなさそうなので、ちょっと調べてみました。
トランスとは
電子工作的にはトランスは「変圧器」。
高圧の発電所で生まれた電気を、一般家庭用に電圧を下げるものがトランス。
これがないと、コンセントがめちゃデンジャラスになって使いにくい。
ファラデーの電磁誘導の法則で、電気 ⇒ 磁気 ⇒ 電気に変換する部品。
鉄心にコイルが二つ巻かれて並んでいるやつで、でかくて重い。(でかくて重いのが正義みたい)
コイルの巻き数を変える事で、1000Vを十分の一の100Vにしたりとトランスを使って自由に変更ができるので、主に電圧変換が一般的な用途だが、直接導通せずに電気を流せるので絶縁目的でも使われるようです。
特に真空管の出力は直接スピーカー接続はできないようで、出力トランスというものの助けを借りているようです。
ただ、昨今は出力トランスや真空管使用の音響機器なんていうものは減少傾向で、半導体(トランジスタなど)が主流。
トランスには非常に高い周波数(もちろん人間の耳では聞こえない)の音をカットしてくれる特徴があるそうです。それに対し、半導体(トランジスタなど)では可聴周波数の10倍や100倍の周波数まで平気で増幅してしまいます。
この効果として、ノイズカットも期待できる。インバータ、モーターは常にノイズを発生させるので、この「ノイズカットトランス」を噛ませることで、影響を緩和できる。
今回、伝聞が多くてスマソ…
エフェクターに「トランス」がある理由
上記のように、出力側でトランスを使う事は、ノイズカット目的以外だと、音響的にはあまり影響がないようす。
特にプラグインである「Shadow Hills Mastering Compressor」の出力に、トランスが必要とは思えません。(DAW上でそこまでノイズが気になるケースは少ない)
なのになぜ?
ここで関係がありそうなのが「透磁率」というもの。
透磁率とは
wikiを見てもよくわからなかったが、Frederickなりに解釈すると「磁石になりやすさ」。
鉄に磁石を近づけると磁力を帯びるが、それを割合にしたもので、モノによって差があるようで、それを示すのが「透磁率」。
鉄と違ってアルミは磁力を持ちにくいので「透磁率が低い」みたいに使うようです。
そしてそれがどう影響するかと言うと…
透磁率による音響の違い
太字は公式サイトからの引用です。
ニッケル
透磁率が高い。⇒ Nickel は、洗練されたトップ エンドを備えた滑らかな低音を提供し、より微妙でまばらなレコーディングで優れたサウンドを提供します。
鉄(アイアン)
透磁率高い。ニッケルと同じく強磁性体。(ニッケル180に対して、鉄5000とか)
ニッケルとの違いは、軟質磁性材(軟磁性材料)であり、磁場を取り去ると元に戻りやすい材料。
⇒Iron Transformer はより色のついたサウンドを持っていますが、100Hz レンジのローエンドをわずかにブーストすることで、手付かずのハイエンドを維持しています。偶数次高調波歪みのみを適用するクラス A 出力段を介して動作し、非常に音楽的なサウンドを残します。
※入力トランスにすると、損失が大きく、ビンテージ感が出るそうです。
鋼(スチール)
どういう鋼かによるが、一般にニッケル以上、鉄未満(ニッケル寄り)。
⇒ 最後に、Steel トランスは非常に詳細で高速なレスポンスを持ち、40Hz レンジで微妙なブーストがあり、ロッキングなローエンドに貢献します。
結論
なにやらどれも曖昧な表現で、
「だから結局どうなの?」と、しばらく悩みました。
明確なのは透磁率が違う事なのだから、トランスの透磁率が何に影響するかを考えれば良いのではないだろうか。
透磁率大きい=インダクタンスが大きくなる、ということらしい。(コイル巻き数や断面積も大きい方がインダクタンス大)
インダクタンス順で表記すると、
鉄 > (大きく空いて)鋼 > ニッケル
となりそうだ。
ただ、インダクタンスの値が音質に直結する訳ではなさそう。
鉄かニッケルを使って、その変化がどうかを見るしかなさそう。
ということで、動画にしてみました。
皆さんお聴きになってみてどうでしょうか。
正直に申し上げて、私の耳ではその差を知覚できませんでした。
ただ、マスターバスコンプとしては皆さま良い評価のようですし、何よりこのプラグイン自体は非常に高性能なので、今後も使っていくでしょう。
公式マニュアルを信じて、私は「アイアン」セクションで使っていこうと思います。
参考サイト様
・世界のトランスメーカー比較 (大変勉強になりました)
FocusriteのマイクプリアンプISA ONEには、「Lundahl LL1538トランス」というものが使われており、特徴となっているようす。(1個14300円!)
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