最近、オープンワールドゲーム『SABLE』をプレイして、そのグラフィックと世界観に深く心を奪われました。

その幻想的で(ある種の)ディストピア的な景観は、まさに宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』のような終末感と繊細な空間表現を強く想起させてきます。
『SABLE』の世界観から受ける神秘的で救いのある感覚は、どうやらフランスの伝説的漫画家、メビウス(ジャン・ジロー)による芸術表現の影響がそこにあるようです。
私なりに調べたものをまとめます。

010コーヒー
自分用の備忘録になります。あしからず…
ゲーム『Sable』について
『Sable』は、イギリスの2人組インディーデベロッパー「Shedworks」が2017年から開発を始め、2021年にRaw FuryからPCやコンソール向けにリリースされたオープンワールド探索ゲーム。
美しい手描き風の世界と幻想的なアートスタイルが特徴で、ゲームのビジュアルはフランスの伝説的漫画家メビウス(ジャン・ジロー)のSF作品に大きな影響を受けているようだ。
また、砂の惑星感が強いのは、スターウォーズの砂の惑星ジャクーの影響もあるそうだ。
さらに、オープンワールドでの探索はゼルダの伝説「ブレワイ」からも影響を受けたそう。
「象徴的な意味を持つマスク」を集める主人公の成長を描く独特な観点のストーリー設定も注目してほしい。(この辺、ムジュラの仮面も作者は好きだな?)
ゲームシステム
プレイヤーは戦闘もレベルアップもなく、自由に旅をしながらシンプルなパズルやアクションに挑みます。
ゲームのペースや目標はプレイヤー自身に委ねられており、その分、世界の広大さやディテールの細やかさ、登場人物の個性豊かな会話などで没入感を高めています。

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語りすぎず、語らなすぎず…最高にナラティブ…
評判
私は自分の好きなゲームが世間的にどう評価されているかは全然気にならないのですが、気にする人がいるから評価があるとも思うので、ざっとまとめてみました。
評価は「概ね好意的」から「賛否両論まで」のようですが、特にビジュアル美術と独特の安らぎを感じる世界観は高く評価されているようです。
反面、操作のカメラワークのクセやバイクの操作感の悪さ、細かなバグが散見されることに対する不満もあるようです。
ゲームメディア『Wired』では「謎をめぐる冒険やクリエイティヴな風景、子どものときのような純真な楽しさはすべて詰まっている」と評していました。
一方『Rock Paper Shotgun』では結構厳しく論評されていましたが、期待ゆえの叱咤激励だろうと、私は思いました。
『Sable』の幻想的で哲学的な世界観が、ゆったりと漂う不思議な安らぎと自己発見の物語であることは、しっかりと浸透しているようです。
メビウスとは

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全然知らなかったけど、めっちゃ好き
メビウスは、1960年代から日本の漫画界に大きな影響を与えた存在で、彼の作風は従来の日本の浮世絵的で平面的なコミック表現の枠を超え、奥行きと精密な遠近法を取り入れた西洋絵画的な空間表現に根ざす。
その中で特に特徴的なのは、「透き通るような色彩」と「幻想的でありながら写実的な遠近法」が融合した作風で、まさに『SABLE』の視覚体験に通じる色彩感覚。
色彩の源泉と想像力の源については、メビウス自身の生い立ちや経験が大きく関わる。
彼は幼少期に祖父母の家で見た絵入り雑誌やギュスターヴ・ドレの作品に強く感銘を受け、また少年期にはアメリカやイタリアのヒーローもの漫画やSF雑誌に触れることで、鮮烈なイメージの宝庫に触れています。

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ギュスターヴ・ドレもめちゃくちゃかっこいい…
特に15歳の時に読んだSF雑誌から「メビウス」というペンネームを得るほど、想像力はSF的な異世界の構築に大きく影響を受けている。
彼の色彩と空間表現はこうした幼少期からの視覚体験やSF幻想の融合であり、単なる写実を超えた「別次元の世界をリアルに感じさせる」力を持つ。
作品を通じて私が感じたことは、「科学的で冷徹(非干渉)なディストピアの中に存在する神秘性や救い」です。
例えばメビウスの代表作『アルザック』や『密封されたガレージ』は、言葉を極力排したサイレントな絵画群でありながら、色彩のグラデーションや空間の奥行きで人間の精神世界の奥深さを表現しました。
彼の色彩は夕焼けや朝焼けの空のように、時に宇宙的広がりや時間の流れまで感じさせる幻想的なもので、「この世界は科学だけでは語りきれない」と語りかけるかのよう。
こうした芸術表現は、宮崎駿の『風の谷のナウシカ』の空間感覚や『君の名は。』の細密に描き込まれた背景、そして色彩の鮮やかさにも通じているらしい。(ナウシカの操るメーヴェに似た描写が随所にみられる)
メビウスの存在は、アニメーションや漫画の世界に「写実的遠近法」と「幻想的色彩」の革命をもたらし、同時に日本のポップカルチャーと西洋のSF美術の交差点となった。
驚くべきことに、メビウスは映画界でもデザインを手がけ、『エイリアン』『トロン』『アビス』などのSF映画作品に、コンセプトデザイナーとしてその世界観を投影しています。

010コーヒー
『SABLE』のディストピア的世界観ながらどこか不思議な安らぎや救いを感じさせる塩梅にも、この影響が見える気がする…
精密な筆致と即興的な表現をハイブリッドさせ、メビウスは常に新しいビジュアル表現を追求し続けました。
SABLE的世界をもっと旅したい

メビウスの影響を色濃く受けたであろう『SABLE』。
その色彩の先には、単なる現実での模倣を超えた「精神的な旅」や「異界の存在感」があります。
まるでプレイヤーに未知の世界の「居心地のよさ」を認識させるかのように。
その絶妙なバランスが、『SABLE』の独特の没入感を形作っていると確信します。
メビウスが描き出した世界観は、技術的な筆致のみならず、文化的・精神的な深みをも携え、『SABLE』のような現代のデジタル作品が継承・改変しながら新たな表現の地平を開拓していることが嬉しい。
ゲームやアート、そして文化の交差点に位置するメビウスの色彩と空間表現は、今後も多くのクリエイターに影響を与え続けることでしょう。
『SABLE』を通じて感じられる彼の芸術は、新しい表現の可能性を探る人々にとって豊かなヒントとなるはずです。

010コーヒー
動画も撮ったから、いつかお披露目できるように頑張ります。