「孫子の兵法がイチからわかる本」現代ビジネス兵法研究会著を読んでみた

sonshi ライフハック
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かねてから、こういう古典的な指南書とか歴史ある格言とかが「今の暮らしに活かせたらなぁ」と思っていました。

偶然こちらの書籍を読む機会がありましたので、簡単にご紹介。

実はシンプルな孫子の兵法

孫子の時代

2500年前の中国、マンガ「キングダム」でもお馴染みの春秋戦国時代末期に書かれたのが、本書が取り扱っている「孫子」です。

群雄割拠・千軍万馬が往来する混乱の世、あまたの思想書・兵法書が生まれましたが、なかでも孫武の生み出したこの「孫子」は、西暦2000年代の今になってなお、廃れることなく読み継がれているのです。

なぜ今も「孫子」の名を目にするのか?

今も多くのビジネスマン・経営者にも読み継がれている「孫子」。

さぞや難しい本なんだろうな、というのが大方の印象かと思いますが、コレが意外!

『孫子』の文字数は、わずかに6000字前後。400字詰めの原稿用紙にしたためて、20枚にも満たないという少なさです。

本書「序章」より

なんとたったの6000字しかないのです。

シンプルイズ孫子。それだけエッセンスが詰め込まれているということの示唆といえるでしょう。

著者情報

本書の著者は、紀ノ右京氏の主催する現代ビジネス兵法研究会。

ビジネスの成功法則を「孫子の兵法」の視点から研究・分析しており、経営者やFP、会計士や学生、主婦など多様な会員で構成されているそうです。

本書以外にも「イチからわかる本」シリーズを出版されていらっしゃるので、気になる方は調べてみては。

読んでみて

良かった点

堅苦しくない表現に好感

まず語り口が重苦しくなくライトでとっつきやすい印象。

ビジネス書になると、難しい書き方が多くなりがちですが、読み辛くては本末転倒。

途中に4コマ漫画や挿絵が加えられて、スラスラと読みやすい。

シンプルだが思索に富んだ深い指南

肝心の内容ですが、各ページに記された孫子の現代語訳をまずゆっくりと読んでみてはいかがだろう。

孫武のシンプルながらも鋭い着眼点。

これらを自分の生活やビジネスにおきかえると、様々な気付きや発見に寄与してくれるのではないでしょうか。

リーダーシップや営業活動、組織運営や経営などで何かしらヒントを求めているビジネスマンの、次の一手の一助になること請け合いです。

戦わずして勝つ

これですね。これに勝る勝利への近道はない。

これが知れるだけでも読む価値ある。

微妙な点

少なからずどうかな?と思う点もあったので憚りながら。

もう少し具体例を

引き合いに出されるたとえ話が少しコミカルにすぎる感がある。

仮名で伏せられている具体例も、「これって想像とか主観じゃないの?」と勘ぐってしまった。

実名・実在の会社名のある具体例もあり、それは非常に有用な情報だが、もうすこし多くの具体例や数値の割合を増やしてほしかった。

本末転倒?

おそらく著者なりに考察を重ねた結果を書いているのだろうが、一見して冒頭の孫子の内容と相反する解釈になっている個所が散見された。

せっかくの現代語訳があるにも関わらず、それが導き出す答えとは明らかに反対の例が紹介されたり、作者の主観(たとえば税金?外務省?)が入り込み過ぎている個所も見受けられた。

特に気になった一例を挙げるなら、

吾が間をして必ずこれを索めてこれを知らしむ

p.54より

これはスパイの有用性と、敵方のスパイをこそ取り込み、逆スパイさせるのが効果的であるという意味合いのページ。

そこでの具体例に取り上げられた出来事は2004年に起こった、中国・上海の日本領事館の電信官自殺事件。

女性問題をネタに日本の職員が脅迫を受け自殺に追い込まれたという、いわゆる「ハニートラップ」にまつわる顛末をここで取り上げているのですが、その話のオチが「日本の防諜システムの不備」と「外務省の無責任体質」ということになっています。

あげく「ハニートラップに引っ掛かりやすい人とは?」という方向に話が進んでいきますが、孫子の内容は「間者をうまく使いましょう」ではないのでしょうか?

「間者に騙されないようにしましょう」という結論では、ここに限っては逸脱であり、論旨のすり替えを感じざるを得ませんでした。

サラッと読む人や参考までにと考えている人は気にならないかもしれませんが、シビアに本書を活用しようとしている人ほど腑に落ちない箇所ではないでしょうか。

まとめ

あえて微妙な個所も取り上げましたが、原典それ自体はやはり歴史の選別を勝ち残ってきた古典であり、その主旨はいまだその輝きを失っていないと感じさせられました。

それらを要約し、現代的な言葉や事例に置き換えてくれた本書も、一読の価値は高いと言えるでしょう。

Kindle版は無料(!)のようですし、知らずにいては損な本には間違いないので興味があれば。

参考リンク

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