Maag Audio EQ4をモデリングしたというvstプラグインの「Luftikus」。
なにはともあれその「ポップな見た目」から、何となくラックに差し込みたくなるのですが、
これまでの経緯から、こうしたプラグインはやっぱりそれぞれの特性をしっかり把握した上で使用することがとても大切(当たり前)だと知りましたので、今回もしっかりと「どういう機能なのか」「どういう変化をするのか」を見ていきたいと思います。
「Luftikus」とは、ハンガリー語で「風通しが良い」的な意味だそうです。ドイツ語だと「いい加減」とな…
Maag Audio EQ4とは
ざっくり調べると、「6バンドのイコライザーで、40kHzをブースト出来て、『エアリー』な感じが出せるのが特徴」という感じでしょうか。
ハードウェアのお値段15万円!(参考)
特徴となっている「AIR-Band」がやはり目玉のようで、公式サイトでも大々的に取り上げられています。(ご本人のお言葉)
人間の可聴域が最大でも20kHzらしいので、40kHzなんてブーストしても何も聞こえないやん、と思うかもしれませんが、実際聴いてみると変化が感じられます。
これは、40kHzのだいぶ手前からブーストがかかっていることに起因しているそうです。
レビュー的なものを読ませていただくと、
- ボーカルに挿したら良き
- 最高のマイクプリだね
- 低域はベースやキックに
- すべてのアコースティック楽器に
などなどがありました。
どちらかというと、中くらいの音域~に特色があるようで、ボーカルトラックに使用を推す方が多く見受けられました。
レコーディング・エンジニアとしての経験が豊富なクリフ・マーグさんという方が深くかかわっていらっしゃり、名機と呼ばれるNTI EQ3(中古でも30万オーバー!!)を生み出したことで有名だそうです。
Plugin Allianceでも取り扱っていました。
lkjb-pluginsのEQ「Luftikus」とは
上記のような特色を持つEQをモデリングした「Luftikus」。
元の機材がもっている「AIR-Band」機能は、「High Boost」と名前を変えて搭載されています。機能も同様に高域のブースト。人間に聞こえないはずの40KHzまでカバー。
こちらからダウンロードできます。
レビューでもかなり好評のようで、なんとPlugin Allianceとほぼ同性能とまで言われています。
特徴としては、ハードウェアの特徴を受け継ぎつつ、
- マスタリングとアナログモードの2モードがある
- 「KeepGain」ボタンで、急激なゲインの変化を回避できる
- 最終的なゲインを調整するための出力Trim
など、より使いやすくするための工夫が施されています。
特に「KeepGain」は、私のようにブリバリノブを弄るタイプのユーザーにはありがたい機能ではないでしょうか。
私の環境で言うなら、ボーカルはあまり使用しないので、アコースティック、例えばストリングス勢とかピアノの中音域~高音域に差し込むのが効果的そうです。
効果検証
検証環境
手元にある音源で、一番アコースティックな感じなのがVienna Symphonic Libraryから頂いた「Synchron Player」のピアノ音源「soft imperial」だと思いますので、こちらで検証してみます。
DAWはもちろんREASON。
MASTER SECTIONはBypass。バスコンプもOFFです。
また、イコライザーは全体のバランスをみて、という御指南もいただきましたので、
ドラムやベース、パッドなども用意して、Luftiksを使うとどう変化するかも聴いていきます。
HIGH BOOSTの効果(ピアノ単体)
やはり「Luftikus」を使うなら、ここの効果が気になります。
バイパス時はこのような感じ。
「High Boost」の40kHzを選択して、ノブはフルテンにしてみたものがこちら。
40kHzという以前に、中音域くらいからブーストされているように聞こえますね。
Signlizerの波形を見るに、100Hzくらいの低めの音もブーストされています。
ここで、「KeepGain」ボタンをオンにして、違いを見てみましょう。
急に音圧が下がりましたね…
なんとなく原音より下がってしまっているようにも感じたので、
- 原音(バイパス)
- LuftikusのHigh Boost(40kHz) + KeepGain使用
の波形を並べてみました。(黄色がバイパスのもの)
やはり原音より音圧が下がってしまっています。
高域は大きな影響はないように見えますが、低域は明らかにボリュームダウンしています。
どうやら盲目的に「Keep Gain」を使うのは避けた方が良さそうです。
High Boostの使いどころ
全体のミックスでどのようになるかはこのあと検証しますが、
ピアノ単体では特に「2k5」の部分が特に良さげだったので、そちらをお聴き下さい。
High Boostの「2k5」をフルテン。High BoostもONにした状態で書き出してみました。
いかがでしょうか。「High Boost」の名の通り、高音が煌びやかな感じになり、低域が変に強調ずに自然な感じに聴こえます。
「高域を聴かせたい」場合には、「2k5」でのHigh Boostが効果的だと言えそうです。
そのほか5kや10kも試しましたが、今回の音源では大きな変化は見られませんでした。
ただ、High Boostじゃなくても、もともと「2.5kHz」のバンドがあり、そちらでも同じ結果でした。こちらは「ブースト」ではなく、抑えたい時に使うということでしょう。
全パート
全パートの中でも使ってみます。まずは全部バイパスのものから。
パッドが主張しすぎていて、ピアノは籠ってしまいあまり聴こえませんね。
次に各トラック(ピアノ、ベース、パッド)にLuftikusを挿して、それぞれイコライジングしたものがこちらです。
いかがでしょうか。
- ベースは高音(200Hz以上)をばっさりカット。40hz以下をやや持ち上げ。
- パッドは全体に少し大人しくなるように。640Hz以上は下げ気味。
- ピアノは低域(40Hz以下)はバッサリカット。それ以上は全体に持ち上げ気味。
- せっかくなので、ピアノのHigh Boostは4kHzでフルテン。
という感じでイコライジングしました。
結論
やはりこれまでの検証と同様、「挿すだけ簡単魔法のプラグイン!」とはならず、
ちゃんと機能の把握と目的を持って使う事が大切なプラグインであることが分かりました。
ただ、目玉であるはずの「High Boost」、特に4kHzの効果は、目に見えては感じられませんでした。
4kHzをOnにすると、気持ち「空気感」というか、「ピアノが広い空間に置かれていて、そこでのびのび演奏しているんだろうな」的な感じを感じられなくもないかな…という感じでした。
このあたりはプラグイン音源ではなく、生音の録音音源などで効果を発揮するのでは?
私が使ってみた感触としては、
- 5バンドというシンプルな構成
- それぞれの効果が明確
- 他に無い「超高音域のブーストができる」
- KeepGainが本当にありがたい
という感じでした。
トラックで埋もれてしまっているアコースティック音源に差し込むと、蘇ってくれるかもしれませんね。
おまけ
マスタリングしてみた
せっかくなので、「bx_masterdesk」やら、REASONご自慢のバスコンプやらもONにして、
しっかりマスタリングしてみました。
全トラックバイパスと比べると、明らかに埋もれずに前に出てきており、調和的なモノが生まれている気がします。
「ANALOG」ボタンの意味
ここまで触れてきませんでしたが、「ANALOG」ボタンというスイッチがあります。
ハードウェア好きとしては、盲目的に押したいボタンですが、その効果は疑問符が付きました。
耳で聴いた感じではON/OFFで差は感じられず。
「Thor」のホワイトノイズを通してみましたが、それでも変化なし…と思いきや、
Signlizerの凄い小さな音量(-110dB?)あたりに何やらノイズが生じておりました。
アナログ機材で発生するアナログ的なノイズ、という意味でしょうか?ともかくそんな小さい音は聞こえないので、このボタンは「雰囲気」ボタンかもしれません。(オーディオI/Oの音量を最大にすると「サー」と聞こえました)
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