あなたは自分のことを「バカ」だと思いますか?
それとも「賢い」と思いますか?
謙虚なあなたは「バカじゃないけど、もっと頭良くなりたい」とおっしゃることでしょう。
素敵です。
かくいう私も
「勉強してないわけじゃないけど、上には上がいるなぁ…」
と、痛感する日々です。(ブログやWEBコンテンツ作りだしてから尚更)
そんな思いからか、養老孟子御大のバイブル「バカの壁」がオフィスに眠っていたのが目に留まり、何気なく手に取ってパラパラ読んでみると……
これが全然古くないの!
……偉そうに言えた身分じゃないのですが、感服しきりだったので、ちょっと書評というか、読後感想を書いて、何がすごいのかを整理してみたいと思います。
「バカの壁」とは
まぁ私が今更説明しなくても高名なお方の本ですから皆さんはご存じでしょう。
確認のために書きますと、
- 2003年発行
- 400万部超えのベストセラー(戦後日本では5位!)
- 同年の流行語大賞
- 新潮新書のまさに看板
……という、数字を見ただけでもモンスターな本なのです。
かいつまんで書いてしまうと、
個性個性と声高に言うが、そもそも人間の脳みそに個性なんてものはほとんどない。
もし個性なんてものが本当にあるとしたら、「社会」なんてものは崩壊してしまう。
そんな幻想をとやかく言う前に、もっと「相手」のことを考えろ。
そしてその「考える」「理解する」ということはそもそも難しいということを知れ。
……となるでしょうか(完全に私個人の主観)。
何がすごいのか
書いてある内容が、発行から10年以上経過した現在でも、まったく通用していることです。
これは驚くべきことです。
頭の良い方(このように書くと怒られそうですが)は想像がついていたのかもしれませんが、
私は正直10年前には、スマホがここまで浸透し、フィンテックがこんなに日常化し、完全自動運転も秒読み、サブスク動画・音楽サービスが当たり前になるなんて想像できませんでした。
そんなすごい部分をいくつかご紹介させてください。
AIに仕事を奪われる
具体的に本著の一部を引用させていただくと…
以前なら、十軒で耕していた田んぼを今は一軒でやっている。そうすると、九家族は遊んでいるわけです。農村人口が減っていくのは当たり前で、合理化すれば、九家族は別なことをしなければいけない。機械化等の合理化によって、一家族が働いただけで、かつてなら十家族が働いていただけの上がり、収穫が出てしまう。(中略)では、その遊んだ分はどうするのかということを本当に考えてきたか。合理化、合理化という方向で進んできて、今もその動きは継続している。が、それだけ仕事を合理化すれば、当然、人間が余ってくるようになる。
第八章 一元論を超えて ‘合理化の末路’p177より引用
この文にある、「当然、人間が余ってくる」という部分。
こんにちの、「AIやロボットによって人間の仕事が3割奪われる」という事象の予言ではないか?
「明日はみんなが飢えない社会を作ろう」と頑張って、
挙句に「ホームレスが増えて困る」と嘆く。
それが、「物事の本質を考えず、がむしゃらに進んでしまったこと」のツケだと、著者は言っているように感じる。
技術の進歩こそ正義と突き進んだ挙句に、ロボットに職を奪われ嘆く姿は、あんまりに悲しくないだろうか?
そうならぬ為に、本書は我々の思考に一石を投じてくれる。
スタンドアローンコンプレックス
いまひとつ、この本の中にある「個性偏重への危惧」は、廃れるどころかより危機感を伴って私たちの生活に迫ってきております。
詳しく書きたくありませんが、
バカッター的な事件やSNSを悪用した暴行・詐欺事件、
過激な思想を背景にしたテロも確実に増加しています。
どれも著者の言う「相手」や「社会」を度外視した行動です。
人間の脳の特に意識的な部分というのは、個人間の差異を無視して、同じにしよう、同じにしようとする性質を持っている。だから、言語から抽出された論理は、圧倒的な説得性を持つ。論理に反するということはできない。
第三章 「個性を伸ばせ」という欺瞞 ‘「個性」を発揮すると’p48より引用
人間の脳の本来の性質を無視した「個性」への偏重、その風潮。
この本を読んでいて今一度、
私たちが軽く使っている「個性」という言葉の意味を考えなおさなくては…
という思いに何度もなりました。
おすすめの読者
なんたって400万部も売れているのですから、
単純計算で30人に一人、
クラスで一人は必ず読んでいるので、
今更感が半端ないですが、あえておすすめ読者をあげるとするなら、
- なぜか話が伝わらないと思う人
- 自分の主張がなかなか受け入れてもらえないと思う人
- 「個性」が無くて悩んでいる人
- 凄い人を前になんだか劣等感を抱いてしまう人
以上のような方には非常におすすめです!
「そういう事で悩んでいること自体が尊い!」とか、
「あの天才がすごいのは、実はそこまで気にする必要なかった!」とか、
必ずその辺のモヤモヤを解消する役に立つことでしょう!
(経験者談)
まとめ
時代を鋭く切り取った本が、それから10年経った今でも色褪せない。
当時の自分とはまた違った自分で読める。
こうやって、過去の本を読み返すのって、
とても面白いなとあらためて感じさせてくれました。
皆さんもタンスに眠っている昔の本、もう一度読み返してみては。
あとがき
動画を作ったり、ブログ書いたり、モノを生み出すことをしていると、
「自分才能ないかも…」と落ち込むことはよくあります。
世に蔓延した「個性」という一見ポジティブな言葉の表面の意味だけに悩まされている人にこそ、あらためて読んで、間違った「個性」という言葉に惑わされないでほしいと思い、ここで紹介しました。
とりあえず、「脳みそは結構均質」って言葉だけでちょっと救われる。
written by Tatsuya
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