NAMELESS STORY #02

NAMELESS STORY #02

スタンドが睨む。

当たり前だが、電気スタンドに使う動詞ではない。

私を睨んでいたのはその電気スタンドを突き動かしている”何か”だったのだろう。

明らかな敵意を持った双眸が、私を射抜くような視線を投げかけている。

…と思っていたのはわずかな時間だった。

数瞬ののち、電気スタンドは狂ったように部屋を飛び回った。

舞い上がり、

奇妙な音を立て、

地面に激突する直前にまた舞い上がり、

そして私に突進してきた。

間一髪そのスタンドを避け、自分のベッドに身を投げ出す。

目論見の外れた電気スタンドは、また空中を舞い上がり、狙いを定めているかのようだ。

私の血液が、恐怖と混乱とが入り混じり、頭や手足を掻き乱してくる。

電気スタンドが浮いているだけじゃない。部屋全体が妙な音や動きをしているだけじゃない。

目と耳がふだん通りの役割を果たしてくれず、立っているのがやっとだった。

そんな私のぐちゃぐちゃの身体の中に、一瞬だが強い光が差し込んできた。

妹たちが、

母が危ない。

その光は一瞬で私の血管を通り抜け、ぐちゃぐちゃだった、油だった血に火をつけてくれた。

擬音を使うなら

smaaaaash!

…と言えばいいのだろうか。

気付けば目眩がする視界の中で、ひいお爺さんの電気スタンドは壊れて動かなくなっていた。

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