【書籍紹介】「華氏451」の文章表現が美しすぎる件

【書籍紹介】「華氏451」の文章表現が美しすぎる件
文章の「表現」にフォーカスします

華氏451

摂氏に直すと約233度で、本の素材である「紙」が燃え始める温度だそうだ。

古い早川書房の文庫本が010ラボの奥深くに眠っていたので、何の気なしに読んでみて、驚きました。

内容の斬新さはもとより、その表現の美しさが卓越している!

これ本当に昔の本なの?

と、びっくりするとともに感銘を受けたので、
興味のある方々のためにこちらで共有してみたい。

いつの本?

1953年に書かれたレイ・ブラッドベリ氏のSF小説。

カバーもなく、もうボロボロ…

手元にあったのは、昭和50年(1975年)に発行されたハヤカワ文庫、宇野利泰氏翻訳による第6刷のもの。

6刷とは言っても昭和56年(1981年)のもの。

良い保存状態であったとはいえず、カバーは無く、外側は変色・シミがところどころに…

中身は全然無事だったので、最近70年代・80年代ブームがきている010ラボはちょっと興味をそそられて読んでみました。

誰の本?

レイ・ブラッドベリ

「火星年代記」「10月はたそがれの国」、そしてこの「華氏451」など、斬新なSFを世に生み出したことで著名なSF作家の大家であります。

SF作家と言うと、宇宙人とつながってたりとか頭の構造が一般人と違うとかどうにもキテレツなイメージがつきまといますが(失礼)、この人は結構気さくで明るい感じの方のようです。

ネットで氏のインタビューなどを拝見すると、すごく希望に溢れ、ポジティブなエネルギーを持った方なんじゃないかと感じさせられました。

特に後進へ向けたメッセージでは、氏が未来にすごく期待していることが伺え、この本を少し違った気分で読むことができました。

どんな話?

冒頭で書いた通り、華氏451度とは、本が燃え出す温度です。

つまりこの「華氏451」のメインテーマには、「本」が大きく据えられています。

それはもちろん物質としてではなく、そこに込められた「情報」「先人たちの知恵・思い・本質」といった側面においてです。

登場する主人公「ガイ・モンターグ」は、本を燃やす=自分の仕事に何も疑問を持たず取り組む日々…。

ところがある日であった不思議な少女・そしてアヤシイ老人らとの邂逅で次第にかねてからの疑問が爆発する…。

結構前半でコトの矛盾に気づくのですが、そこからの奥さんとのやり取りや職場の上司との駆け引きがもうヒヤヒヤものです。

文章表現の鮮やかさ

同書より引用。
一枚しかないこの挿絵さえ要らないくらい表現で楽しめます!!

例文

さて本題。

真鍮の筒さきをにぎり、大蛇のように巨大なホースで、石油と呼ぶ毒液を撒きちらすあいだ、かれの頭のうちには、血液が音を立て、その両手は、交響楽団のすばらしい指揮者のそれのように、よろこびに打ちふるえ、あらゆるものを燃あがらせ、やがては石炭ガラに似た、歴史の廃墟にかえさせるのだった。

本書p.11 より。原文ママ。

それは回転している火の大行列だった。満天に光輝を放って進行する星団のうごきが、巨大なクリシナ神の祭車を形づくり、かれを轢きつぶそうとしているかに見えた。

本書p.236より。原文ママ。

地の上には、何千億枚もの木の葉が散りつもっているにちがいない。かれはそのなかを、かきわけるようにして歩いた。クローバーの熱いかおりと、あたたかい花粉のにおい。それは乾いた川。そしてその他のさまざまなにおい!

本書p.242より。原文ママ。

いかがでしょう。

特に煌びやかな言葉や過剰に着飾った言葉は見受けられませんが、それでも情景が美しく、しかも当事者の感じるままであろう勢いでこちらに飛び込んできます。

もちろんこれは邦訳版なので、原典とは違った表現もあるかもしれません。

それでもなお、物語がもつパワーと相まって、これら様々な言葉のスプラッシュが、芳醇な読み応えを供してくれます。

どうしてこの表現が生まれたか

インタビュー中で、

「思いつく様を原稿に叩きつけるかのように」

(010ラボ意訳)

と語っていたとおり、その表現・言葉の流れは激しく、時に多方向に向かいます。

一見散漫にさえ見えるときもあります。

それはまるで私たち人間の感情の移ろいがそのまま文章になったかのようです。

ある日ビーチを妻と散歩していた時に見た景色に着想を得、その翌朝早くに一気に物語を書き上げたこともあるそうです。

情熱のほとばしるまま、考えながらではなく、情熱に任せて書く。

自分も何も分らぬまま書いていて、3年後にようやく何を書いているのか見えてきた作品もあるそうです。

物語を書いていて(それに限らないと思いますが)、最初に書いて、ダメだと思って捨てて、何度も何度も書き直して、結局最初に表現が一番適当であったと気付くことって、結構クリエイターあるあるじゃないでしょうか?

昨今の計算され、勉強されつくした表現に二の足を踏んでいる文章家志望者にとって、氏の言動は良いお手本といえるでしょう。

おすすめ本たち

ここでは興味を持っていただいた方に、ぜひ読んでもらいたい書籍たちをご紹介。(だいぶ私見が入っておりますご了承ください汗)

華氏451

※2014年に伊藤典夫氏による新訳版が、同じくハヤカワ文庫SFより刊行されていました。これもそうだけど、下の「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」も本のジャケットデザインがカッコよすぎる…

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

※ブラッドベリさんの本じゃないけど、こちらもオススメしたい。「ブレードランナー」の原作としてめちゃくちゃ有名ですが、SF的な設定よりもむしろ濃密な人間模様とかの方に注目して読みたい。

一九八四年

※こちらもブラドベリさんのじゃないけど。システム的なものに支配権を明け渡してしまった人類の世紀末感が似ている。アニメPSYCHO-PASS(サイコパス)のシビュラシステムとか、「マイノリティ・リポート」的な話とかに反応しちゃう人向け。

火の鳥-未来編

「火の鳥」は全部マストですが、こういった未来的ディストピアといえばこの「未来編」。電子頭脳の言うがままに核戦争を始めてしまう人類の盲目さ加減が、焚書官たちの職務への盲進具合に似てて怖い。管理社会コワイ…

虐殺器官

※あのコジマヒデオも絶賛した若き作家。ご本人もコジマ作品のファンだったそう。あまりに短命だったことが悔やまれますが、その足跡はここにしっかりと残されています。作中に流れる退廃的なムードとかこの世の終わり感が悲しい。 多分メタルギアTPPにもかなり影響を与えているはず。ノイタミナでアニメ化されているみたいですが、筆者未見。

まとめ

とにかく

「よし!面白い物語作ろう!」

とかなると、

煌びやかな表現とか難しい単語とか構造とか起承転結とかETCETCが気になって、結局

「書けない!!」

…とか袋小路に迷い込んでいる物語の紡ぎ手志望者全員に贈る!

前回の「ファンタスティックワールド」の記事でも動画でも話しましたが、

とにかく己の思うままを吐き出す!

先達たちがこれだけ口を揃えておっしゃるんだから、間違いないんでしょう!

頑張れ!σ(゚∀゚ )オレ

written by Tatsuya

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